全ての始まり

朝っぱらに突然俺の房にやって来た看守が言うには今日から俺の教誨のために、一般人と手紙のやり取りをさせるらしい。恐らく先日の脱獄騒ぎで上官に絞られたのか悲壮感すら漂う看守はそう言って俺を房から出させて引っ立てる。痛いだろ、と抗議しながらも面倒な事になったと嘆息。手紙のやり取りって要はあれだろ?文通ってやつ。昔から独りで生きてきた俺に、今更手紙のやり取りをする相手もいやしねえ。そう思って看守の新しい企みを鼻で笑っていたら、小部屋に通されて目の前に紙と鉛筆を突き付けられる。今すぐ書かないと懲罰って、待ってくれよ。手紙はそうやって強制されて書くもんじゃないだろ?とは言いつつも懲罰はごめんなので仕方なく据え置かれた机について思案する。手紙なんて書いた事も無いからどんな書き出しでかけば良いのか分からねえ。そもそも相手は誰だ?そう思って看守に問うてみれば、奴は面倒くさそうな顔で言った。

「女だ、それも年頃の」

何だって!俄然やる気が出て来たぜ!

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