彼女からの手紙 四

拝啓、白石由竹さま

残暑厳しい折柄、白石さまにおかれましてはいかがお過ごしでしょう。先日のお手紙で懲罰房という言葉を見て、白石さまの事を案じておりました。無事に出られたのかしら。あまり無茶はなさらないでくださいね。

それから先日はお手紙をありがとうございました。「顧みられる自由」なんて、わたくし考えもつきませんでした。

わたくしは生まれた時から色々な事を制限されていて、自分で自分の事を不自由で可哀想な子供だと思っていました。兄や姉が許される事を、わたくしは許して貰えないから。

でも白石さまが教えてくださった「顧みられる自由」という視点で今までの事を思い返すと、わたくしは本当に自分の事しか見えていなかったのでは、と自らの矮小さが恥ずかしい限りです。

教誨というお役目を頂いているにも関わらず、このような体たらくで恥じ入るばかりですが、それでもわたくしは白石さまを顧みる事が出来るよう、お手紙を綴りたいと思っています。だから白石さまがわたくしに綴って欲しい事がありましたら、どうか遠慮無く教えてくださいね。

そういえば、以前同封した金鳳花の絵を覚えていらっしゃるでしょうか。今日はあの花の種を同封いたします。そろそろ植え付けの時期なのです。良ければ育ててみてください。

わたくしは昨日、同じ株から採れた兄弟種をお庭の片隅に植えました。芽が出てくるのをとても楽しみにしています。

朝夕は冷え込んで参りますので、お身体にはくれぐれもお気をつけくださいませ。白石さまの事を朝な夕なに案じております。

かしこ