私と姉さんはとてもよく似ている。外見だけでなく、好きな物嫌いな物得意な事不得意な事、何もかもが似ている。心根以外は。つまり。
「なまえ、私少し……」
申し訳なさそうな顔で外の様子を気にする姉さんに私は心にも無い笑みを浮かべる。分かっている。今日はあの人が来る日だ。「姉さんの大好きな基ちゃん」が。
「私は大丈夫だから行って」
聞き分けの良い妹を演じる私に姉さんはもう一度謝って私に背を向けて部屋を出ていった。すっと、顔から表情が抜け落ちるように真顔になった私の顔はきっと気味が悪かったろう。私は知っている。姉さんと「基ちゃん」が良い仲な事。姉さんが時々語る寝物語の中に出て来るまるでこの世の沢山の素敵な物を詰め込んだような男。私も知っている。誤解されやすくて、集落の人間からは乱暴者の誹りを受けているけれど、その実誰より人の痛みを知っている、そんな人だ。
姉は「基ちゃん」をいたく気に入っていた。幼い頃から姉は癖毛を良く揶揄われ、その度に泣いて帰って来ていたのに、ある日を境にぱたりとそれは無くなった。それが「基ちゃん」のお陰だと私が知るのに時間はかからなかった。
姉と「基ちゃん」はいつも一緒にいたから。
二人が海沿いの岩場で何事かを話しているのを、遠い木の影から眺めながら、私は病から立ち直った貴重な時間を使った。そして海風に当たり過ぎてまた体調を崩した。
私では。
熱に浮かされた頭では、時折そんな馬鹿げた考えが浮かんで消える。顔貌が全く同じなのに、私では駄目なのだろうか。健康な身体でなければ、駄目なのだろうか。私と姉で何が違うのだろうか。私の存在意義とは何なのだろうか。
それはきっと姉にしかない、私が到底持ち得ないものなのだ。それを知るのは私が病から起き上がって数日たった頃であった。
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